「そう云う大きな建物の、奥の奥の部屋へ行くと、もう全く外の光が届かなくなった暗がりの中にある金襖や金屏風が幾間を隔てた遠い遠い庭の明りの穂先を捉えて、ぽうっと夢のように照り返している。(中略)私は黄金と云うものがあれほど沈痛な美しさを見せる時はないと思う。」(谷崎潤一郎 陰翳礼讃より)
広東省仏山市の商業開発区の展望タワー最上階を寿司ラウンジへ改装することになった。眼前の消費社会を象徴するような煌びやかな光景を眺めつつ、対照的に落ち着いた高級感を如何に作るか。我々は谷崎潤一郎の冒頭の文章を拠り所とし、室内のほとんどを黒い素材で構成して漆黒の闇を作り、その奥に屋外の光を捉えて浮き上がる黄金を想像して、これを「沈痛な美しさ」として見せることとした。
住所:中国広東省仏山市
面積:93㎡
設計:堤由匡建築設計工作室+北京鳴意品牌設計有限公司
(堤由匡、明達、肖陽,洪秀秀)
照明デザイン:ライトモーメント(田中圭吾、Lisa Jiang)
設備設計:北京東洲斎技術諮詢有限公司(石川星明、竹林克宣、山崎隆司)
施工:仏山市鉑鋭設計工程有限公司
写真:聿空间摄影
竣工:2022年3月